令和4年度採択事業者 インタビュー

2023年9月作成

株式会社カルディオインテリジェンス

株式会社カルディオインテリジェンス

医薬品による副作用マネジメントのための
長時間心電図用QT間隔解析AIの開発・事業化

株式会社カルディオインテリジェンス
取締役COO 武智 峰樹

R&D室 波多野 薫

薬の副作用による突然死を防ぐ
心電図を高精度に解析するシステム開発

株式会社カルディオインテリジェンスは、多様な心臓病の早期発見を目指して、長時間心電図用の革新的なAIプログラム医療機器を開発する大学発ベンチャーである。上市済みのAI医療機器として、心房細動の早期発見を支援するSmartRobin AIシリーズ*を展開する。その他のパイプラインとして、AMDAPの支援を受けて、心電図の波形によらずQT間隔の24時間連続解析が可能なAIを開発中である。AMDAPの支援を社内でのコミュニケーションを促す場につなげ、プロジェクトの推進に並行して組織力の向上を図る。

  • 販売名 長時間心電図解析ソフトウェア SmartRobin® AI シリーズ
  • 一般的名称 ホルタ解析装置用 プログラム(36827012)
  • 医療機器認証番号 302AHBZX00026Z00

――心電図から紐解く「QT延長」とは?

取締役COO 武智 峰樹

武智抗がん剤や抗不整脈薬、向精神病薬、抗生物質などの薬には副作用として、致死性の不整脈を引き起こす可能性のあることが明らかにされています。

心臓が収縮するときにできる波をQRS波、収縮した心臓が元に戻るときにできる波をT波といい、Q波の始点からT波の終点までの距離が「QT間隔」です。このQT間隔が延長した状態を「QT延長」といい、「QT延長」が致死性の不整脈を引き起こすことが知られています。QT延長を早期に発見することが致死性不整脈による突然死を防ぐための“要”になります。

QT間隔には医薬品の血中濃度依存性や日内変動があるため、24時間など長時間の心電図の解析が重要です。ところが、従来の心電図のQT間隔の自動解析プログラムは精度が低いため、ガイドラインでは手動での解析や目視での確認が推奨されています。私は初めて拝見したときはとても驚いたのですが、ディバイダーというコンパスのようなものを、PCの画面に当てて、QT間隔を測定するのです。24時間の心電図波形は10万個程度あります。10万個の波形をすべて目視で確認することは、時間的に難しいことから、臨床現場では実際は受診時に10秒程度の心電図での解析がなされています。これを私たちの技術で解決したいと考えています。

私たちは、すでに心房細動の早期発見を支援するAI医療機器プログラムを製品化し、多くの医療機関で役立てていただいている実績があります。QT間隔の解析は、まさに私たちの技術で解決すべき臨床現場の課題だと捉えています。

――今後の展開について聞かせてください。

武智弊社では、QT間隔の24時間連続解析が可能なAIの基礎技術を開発済みです。今後、製品開発や医療機器承認の取得を行い、日米欧で上市していきたいと考えています。
この取り組みを通して、東京発のイノベーションで世界のグローバルニッチトップ企業を目指していきたいと考えています。

――最後にAMDAPの支援を受けた感想を聞かせてください。

知財・新規事業開発室 波多野 薫

波多野小さな組織で立ち上げた新規プロジェクトということもあり、パワーポイントなどの資料作りのテクニックから、薬事や知財についての相談など、あらゆる困りごとへの助言をいただきました。100人を超える専門家の中から適切な方を紹介してもらえる仕組みを活用できたことで、プロジェクトも人材も育ったと思います。

AMDAPの事業に採択されてすぐに、過去に採択された企業の方から経験談を聞く機会がありました。その時に「一ヶ月に3回ぐらいカタライザーと面談があって、そのための資料の準備に苦労した」という話を聞き、「その作業をこなせるだろうか」と、不安に駆られたこともありました。

実際に支援が始まると、カタライザーの方が、つまずいたところを丁寧に指導してくれました。また、うまく言葉にできなくて困っていた箇所の言語化や可視化も支援してくれました。そうやって一緒に汗を流してくれるから、私たちもそれに見合うアウトプットを面談の度に出そうと努力するのだということを感じました。

支援開始前に話を聞かせてくれた企業の方は、こなさなければならないボリュームを教えてくれたのではなく、努力した結果のボリューム感を共有してくれたのだということを、伴走支援を通して実感しました。

また、特にAMDAP主催の合同勉強会は、プロジェクトへの関わりが浅い社員も参加をするなど、社内のコミュニケーションの場にもなりました。そのおかげで、本プロジェクトについての社内共有もしやすくなったと感じています。

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