令和元年度採択事業者 インタビュー

2020年6月作成

アドリアカイム株式会社

アドリアカイム株式会社

行政側で審査を担当されていたOBの方が専門家としてアドバイスをくださるのは助かりました

アドリアカイム株式会社
代表取締役 社長 小林 正敏
取締役 CTO 今林 浩之

中立で客観的な視点からの指導

――AMDAPの支援を受けた感想を教えてください。

中立で客観的な視点からの指導 小林正敏さん

小林AMDAPでは「カタライザー」と「専門家」という2つの立場の方から支援を受けます。当初はカタライザーと専門家との違いも意識できていませんでしたが、支援を受ければ受けるほどカタライザーと専門家の役割の違いがわかるようになり、それぞれのアドバイスが素晴らしいものだと思うようになりました。

カタライザーさんからは客観的で中立的な視点からアドバイスをいただいています。「こういう先生にも意見を聞いた方がいい」、「この人は僕と違う意見をもっていますね」、「他の専門家の意見も聞き、そのうえで判断すべきです」といったアドバイスをくださいます。われわれ自身による判断をとても大切にしてくれていますし、われわれが判断材料をえられるよう専門家を紹介してくれています。

われわれが開発しているのはクラスⅢ~Ⅳの治療機器ですので、開発することも承認を受けることも非常に難度が高いです。カタライザーさんはこの分野でわれわれより経験豊富であることがアドバイスの中から伝わってきます。専門家の人脈も豊富で、支援を受けられて本当によかったと思っています。

カタライザーさんと相談し、さまざまな専門家を紹介していただいておりますが、AMDAPに登録されている専門家のなかには、たとえばPMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)のOBの 方がいらっしゃいます。行政側で承認審査に関わられていた方が専門家としてわれわれの側に立ってアドバイスをしてくださいます。これほど心強く、有り難いことはないですね。「この表現では内容が伝わりにくいから、この文言はこうしたほうがいい」と具体的なアドバイスをいただけます。

AMDAPのほかにも支援を受けてきましたが、これほどトップレベルの専門家の方からのご指導を受けられた経験はありませんでした。

日米それぞれの承認に向けた取り組みを、最小の投資でおこなえた

――こうした支援を受けることで、何か変化はありましたか。

小林大きな変化が2つあります。まず、資金調達がとても進めやすくなったということです。投資を依頼するためにベンチャーキャピタルの方に当社の事業内容を説明する際、AMDAPの支援対象事業者として採択されたことを伝えると、前向きな理解をしていただけます。AMDAPで採択された企業には有名企業がいらっしゃいます。当社もそうした企業と肩を並べる企業と理解されるようです。

過去に何十社ものベンチャーキャピタルの方にお会いしてきましたが、そうした方々に、「投資家」としてではなく、AMDAPの「資金調達の専門家」としてお会いすると、同じベンチャーキャピタルの方との話であっても、われわれにとってより有益な内容となりました。われわれの取り組みや認識に不足する部分を指摘してくれました。「株価の設定が甘い」といった具体的な指摘だけでなく、「お金を集めることは、思っているほど簡単なことではない」といった基本的なことをしっかり伝えてくださり、本当に有り難く思いました。

今林もうひとつの変化は、日米それぞれでの承認の進め方をうまく整理できたということです。

米国のFDA(米国食品医薬品局Food and Drug Administration)と日本のPMDAへの承認申請をおこなうにあたり、両者に効率的に対応できる戦略を考えました。われわれとしては二重投資を避けるために、FDAとPMDAの申請で同じ試験結果を使えるようにしたいわけです。そのための課題をAMDAPの専門家が洗いだしてくださいました。日米の承認申請をうまく進めるために、AMDAPの支援をフルに活用させていただき、一定の成果をえられています。

小林このほか、われわれだけでは出会えないKOL(Key Opinion Leader)医師をご紹介いただくなど、多岐にわたる支援をしていただいていることには感謝しかありません。

治療機器開発の最前線に立つのはわれわれベンチャー

――AMDAP支援に今後期待することはありますか。

治療機器開発の最前線に立つのはわれわれベンチャー 今林さん 小林さん

今林医療機器には「診断機器」と「治療機器」がありますが、治療機器を開発するほうがはるかに困難です。治療機器の開発には大規模な投資額が必要で時間もかかります。大きなリスクが伴いますので、大企業は手を出しにくいのです。だから、治療機器の開発はベンチャーがやらなくてはならないと考えています。

小林これから先、医療が進歩して診断機器が進歩すると、「あなたはこういう病気です」という診断ができるようになるでしょう。でもそのとき、治療機器のイノベーションが進んでいなければ、「診断はできても治療することができない」ということが起こりえます。そうした事態にならないよう、われわれベンチャーが積極的にリスクをとりながら治療機器を開発しなくてはいけないと思っています。

われわれは治療機器開発の最前線に立っているわけです。そして、われわれが治療機器開発に取り組むためにAMDAPの支援はとても大切で、本当にありがたいと思っています。

――今後の可能性についても教えてください。

小林われわれの開発しているARiSは、自律神経の中の副交感神経に微弱な電気刺激を与えることで心筋梗塞の梗塞部分を改善するものです。薬では副交感神経を制御することはできないので、デバイスにより制御する手段は新たな治療方法として価値があると考えています。現在は心筋梗塞に絞って開発を進めていますが、神経治療の観点から、脳梗塞など幅広く応用できると期待しています。

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