令和2年度採択事業者 インタビュー

2021年10月作成

株式会社Liquid Mine

株式株式会社Liquid Mine

白血病の再発を早期に発見する低侵襲モニタリング検査システム

株式会社Liquid Mine
代表取締役社長 岸本 倫和

支援は「特進クラス」で学んでいるようなもの

血液検査で白血病の再発を確認

――白血病に罹患しているかどうか、骨髄生検(こつずいせいけん)をする必要があるといいますが、これはどうしてでしょう。

血液検査で白血病の再発を確認 岸本さん

岸本骨髄の中では造血幹細胞が盛んに細胞分裂を行い、赤血球・白血球・血小板を造り出しています。白血病は造血幹細胞の一部が、がん化する病気であり、骨髄中の造血幹細胞を調べることで白血病に罹患しているかどうか、白血病が再発しているかどうかを調べることができます。ただし、骨髄液を採取するためには、腰椎(ようつい)のあたりの骨に、直径4ミリ程度の注射針を刺して、骨髄液を採取する必要があります。

直径4ミリというのは、50円玉の中心の穴くらいの太さですから、注射針としてはとても太いものです。注射を打つ前には、部分麻酔を行いますが、それにしても「グサッ」「ゴリゴリ」という感触と、実際に音も聞こえるようです。患者さんは麻酔をしていても、痛みを感じることがあるようで、「もう二度と骨髄生検は受けたくない」と言われます。

白血病は再発した場合、なるべく早い対処が必要な病気ですが、この骨髄生検の辛さが大きな障壁となっています。1~3カ月に1回の検査をするべきところが、半年に1回程度の検査頻度になってしまうと、結果的に再発の発見が遅れてしまいます。弊社の「白血病の再発を早期に発見する低侵襲モニタリング検査システム」は、診断時の骨髄生検のみで、その後は血液検査で白血病の再発の有無を確認する方法を研究したものとなっており、このシステムの事業化にあたり、2019年に会社を設立しました。

全ゲノムを独自の解析プログラムで解析

――血液検査のみで、白血病の再発がわかるのですか。

岸本 そのためには、まず患者さんの遺伝子情報を調査しなければなりません。今では「次世代シークエンサー」で、遺伝子情報の全てを得ることができるようになっています。人間には二万以上の遺伝子があり、患者さんのサンプルに対し次世代シークエンサーで網羅的遺伝子解析を行うと、その患者さんのがんを引き起こしている遺伝子変異候補は数千から数十万個出力されます。人間がその一つ一つを吟味しながらその中に含まれる数個の原因遺伝子変異を探し出すことは現実的ではないため、私達は独自の解析プログラムを開発しました。患者さんの白血病の原因となる遺伝子変異を正確に見つけるというのが弊社システムの中核です。そして、遺伝子変異に対応した試薬を作成し、血液検査に使用します。血液にこの試薬を混ぜることで、白血病の再発があるかどうかの、判断の助けとなる検査システムの確立を目指しています。

攻めの知財戦略

――AMDAPの支援を受けることで、開発にはどんなメリットがありましたか。

岸本カタライザーの方は、我々にとっては担任の先生のような存在です。常に開発の先を考えて、弊社にとってこれから必要になることを、先回りして助言をしてくれます。専門家の先生は、それぞれの専門科目の先生のような存在であり、特進クラスにいるような感じで、心地良く支援を受けています。

最終的には薬事承認と保険収載を目指していますが、弊社には開発の経験がなく、詳細はわかっていないという状況です。専門家の先生には、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)で医療機器などの薬事承認に関する審査を実際に行っていた方や、厚生労働省に勤務されていた方がおられるので、具体的に薬事承認や保険収載までのスケジュールや道筋を教わっています。

また、弊社としては、事業展開において開発したソフトウェアを特許で押さえることが重要になってきますが、知財戦略に特化した弁理士事務所をご紹介いただき、助かっています。「今後この部分を特許として押さえる必要があり、海外のライバル企業に先に押さえられてしまうと危ないので、早めに動きましょう」と、抜かりなく知財を固めていくことを支援いただいています。

創業時に1年半くらいをかけて1件の特許を出願しました。AMDAPの支援をいただくことで、知財に関するスピードが上がっており、10か月くらいの間に、新たに3件の特許を出願する予定です。これはAMDAPの支援があったからだと思います。

支援者、出資者にひびく資料づくり

――具体的な支援で、これは良かったということがあればお教えください。

支援者、出資者にひびく資料づくり 岸本さん

岸本発表資料を作る場合、言葉をなるべくわかりやすく書くようにと、カタライザーの方から教わり、とても役に立っていると思います。専門的な内容になればなるほど、アルファベット3文字を使う略称などが頻発しますが、「そういう言葉を当たり前のように使わない、わかりやすく書く」ということを指摘されました。
染色体や遺伝子情報という意味を持つ「ゲノム」という言葉一つにしても、そのままで使うのではなく、一般の方でもわかるように書く。このようなことをきちんと取り組んでいくことで、様々な方々から、「資料がわかりやすい」と評価いただけるようになりました。これは様々な方から支援や出資いただくためにとても重要なことです。

薬事承認審査のために提出する行政関係の書類についても、審査経験のある専門家の先生に非常にわかりやすく指導いただき、助かっています。

日本国内の白血病の新規患者は、2019年1年間で約1万4000名となっています。弊社はAMDAPの支援を受けながら、患者さんのお役に立てるような検査システムを構築していきます。

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