医療機器産業は、国内のみならず世界的にみても将来にわたり持続的な成長が見込まれています。しかし、市場構造に目を向けてみると、診断機器は国内メーカーに一定の強みがあるとはいえ、金額ベースで半分を占め、より高い成長が予想される治療機器においては欧米を中心とした海外メーカーからの輸入比率が高く、我が国が得意とする信頼性の高いものづくりが生かされていません。一方、都内には臨床評価、法規制、医療保険制度に加えて、ビジネスや金融等の専門人材が集積しており、医療機器開発を行う上での高いポテンシャルが存在します。
本プロジェクトでは欧米メーカーに対して劣勢にある医療機器産業において、開発マインドの高いベンチャー・中小企業のビジネスプランに対し、都内に集積する各分野の専門家による指導・助言を行い、医療の発展に貢献する医療機器の開発・事業化に向けた集中支援を行います。なお、最も優れたビジネスプランに対しては、治験費用を含めた研究開発補助(1期あたり最長3年・上限3億円・補助率2/3以内を最長2期まで(最長6年・最大6億円・補助率2/3以内) ) を行います。
これらの取り組みを通じて、高度管理医療機器等先端医療機器(以下「先端医療機器」という。)開発のモデルケースを創出し、後続の優れた企業の参入を促進するといった好循環を構築することで都内医療機器産業の活性化を図ることを目的としています。
本プロジェクトでは、先端医療機器に関する優れたビジネスプランを有するベンチャー・中小企業を募集し、最大3件の採択を行います。
先端医療機器としては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器法)」の医療機器(動物用を除く)が対象となります。
ビジネスプランには、マーケット、技術開発、法規制、知財、体制整備(開発時、販売時)等に関する計画が含まれます。事業化の時期は本事業採択後から、おおむね10年以内とします。
採択された事業者に対し、ビジネスプランのブラッシュアップに関する集中支援を3年間にわたり行います。
集中支援にあたっては、医療機器産業の業界事情や法規制に精通し関係機関に幅広いネットワークを有する人材(以下「カタライザー」という。)が、採択された事業者ごとに1名配置されます。カタライザーは、定期的にミーティングを開催し、進捗度合いに応じて 各種専門家と連携した指導・助言を行います。
担当カタライザーが中心となり、さらに各分野の専門家と連携することで、先端医療機器開発に向けた市場探索、資金調達、類似競合製品のクリアランス調査、製品デザイン・コンセプト設計、試作機開発、量産試作、非臨床試験、臨床評価、薬事戦略、知的財産戦略、販売・物流戦略、事業組織の構築などに関する専門的な助言を行います。採択事業者は1年につき36回、開発プロジェクトに対する指導・助言を受けることができます。
また、東京都医工連携HUB機構、公益財団法人東京都中小企業振興公社及び地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターと連携することで支援効果の最大化を図ります。
支援開始から1年6か月経過後(令和5年度採択の場合、令和7年3月頃)に、最も優れたビジネスプランを有する事業者を選定し、治験費用も対象となる補助金による開発支援を行います。ただし、審査会において一定以上の評価を得たものに限ります。
開発支援は、一期あたり最長3年・上限3億円・補助率2/3以内の補助を行います。あらかじめ設定されたマイルストーンを達成し、審査を経てさらに最長3年・上限3億円・補助率2/3以内の支援補助が受けられます。
ビジネスプランのブラッシュアップに関する集中支援に平行して、本プログラムでは医療機器等開発着手支援助成事業と連携し、知財調査、前臨床試験の実施と評価等の実施、マーケティング調査等の支援を受けることができます。ただし本助成事業には対象要件があり、審査を経て助成事業者を決定するもので助成金の採択を約束するものではありません。
高齢者人口の増加に伴い骨粗鬆症性椎体骨折や腰部脊柱管狭窄症等の脊椎疾患に対する治療需要が増加しているが、日本で主に使用されている脊椎治療機器は輸入品で、日本の高齢者に適合していない場合が多く、手術後にインプラントの緩みや隣接する椎体に障害が起こるなどのリスクが高い。脆くなった骨にセメントを充填する方法を改良するとともに、同時に挿入するインプラントも開発することで、最終的に骨を補強しつつ過度に椎体を連結固定しない治療法を確立し、これらの課題克服を目指す。
WHOによると、日本ではうつ病の患者数が約506万人と推計されており、その数は増加傾向にある。うつ病の診断では、問診や心理検査等を基に評価が行われており、医療従事者および患者ともに時間的・心理的負担が大きい。そこで、音声に含まれるうつ症状に関連した特徴量(音声症状)を解析し、簡便かつ客観的にうつ病の重症度を評価する医療機器プログラムを開発する。本機器により、うつ病の早期発見と早期治療に結びつけることで、より良い医療と患者QOLの向上に貢献する。
通院による血液透析治療は一般的に週3回・1回4時間で実施するため、間欠的で患者への身体的負担が大きい。また、通院による時間的制約から、就労の際の制限にもつながり、患者のQOLに大きく影響している。現状の在宅向け血液透析装置は給排水設備を必要とするため大型で、また、医療従事者向けのため操作が難しい。そこで透析液をシステム内で再循環させる技術により給排水設備を不要とし、また、患者が家庭で簡易に操作できる在宅向けの小型の血液透析装置を開発し、患者への身体的・時間的負担を軽減する。
がん性皮膚潰瘍は、女性は乳がん、男性では肺がんからの皮膚転移による頻度が高いと報告されており、難治性かつ進行性で、滲出液、出血、痛み、悪臭など身体的苦痛および精神的苦痛を伴い、患者のQOLを著しく低下させている。臨床現場では多くの場合患部の消毒や軟膏の塗布、ガーゼ交換などの処置が行われており、本人や家族にとっても負担となっている。
開発品では、病巣に微細径で低侵襲な発熱プローブを穿刺し、癌組織や血管を加熱・凝固させて病変を変性させ、患部からの滲出や出血、痛み、悪臭を防ぎ、患者のQOLの向上を目指している。
既存の家庭用眼圧計は高価格・利便性の面で普及していない。眼圧は一日の間で変化するが、把握するための低コストな手段が存在しない。本製品は、低コストであり、まぶた越しに、自宅で自分で測定できるタイプの眼圧計である。眼圧の自己測定を普及させ、点眼薬の服薬アドヒアランスが向上することを弊社は目指している。これにより失明原因1位である緑内障の重症化の回避に貢献したい。取得データを患者ー医療者間で共有すれば、診療の効率化も期待できる。
睡眠時無呼吸に対するカテーテル治療とワイヤレス充電技術を活用し体に優しい革新的な治療の開発を行う。高齢者の10人に1人いる心不全患者の約4割に合併する中枢性睡眠時無呼吸は、心不全を増悪させ再入院率・死亡率を高める重篤な疾患だが、未だに低侵襲で有効な治療法がない状況である。我々の開発する治療機器により低侵襲に無呼吸を治療することで、心不全患者の再入院率の低下・死亡率の改善・QOLの向上を目指している。
抗不整脈薬や抗精神病薬、抗がん剤等の副作用として、心筋の興奮異常である薬剤性QT延長症候群があり、突然死の要因となることもある。QT時間は1日の中で変化することがあるため、従来の短時間の心電図検査ではQT延長を見逃すリスクが高い。一方、長時間心電図検査の実施により発見率は上がると考えられるが、心電図波形の解析に時間を要する。長時間心電計用のQT間隔解析AIを開発し、QT延長を見逃すことなく、副作用を考慮した適切な薬剤投与量に調整できるようにする。
動脈硬化病変の一つである下肢動脈硬化症に対するカテーテル治療のステント(金属の金網状の筒)留置術は血流改善のため一般的であるが、治療後に血中細胞の凝集体(血栓)の付着などにより再度ステント内が詰まる問題がある。こうした課題に対し、細径血管でも血栓が付着しづらく、正常な血管への修復を早期に促すような特殊なナノコーティングと薬剤を組み合わせた独自デザインのステントを開発している。日米同時で治験を実施するための研究開発を進めており、世界中の患者への使用を目指す。
がんの最終診断である病理診断を支える病理専門医の人数は、増加するがん患者に対して圧倒的に不足している。また診断知見も個人に依存することから、育成以外の方法での対策が中⾧期的に求められる。そこで、人の目を超えた高精度な分光情報を有するハイパースペクトルカメラで撮影したがん細胞画像をAI で分析する病理診断支援システムを開発し、病理医不足の解決およびがんの早期発見、診断精度向上を実現する。
特発性拡張型心筋症は、心臓が拡張し、心不全を引き起こす指定難病で、現在約2万人が認定されている。心不全が進行すると心臓移植が唯一有効な治療法であるが、絶対的なドナー不足により心臓移植が受けられる患者は年間80例未満であり、新たな治療法の開発が望まれている。
そこで、この病気に対する新たな治療法「心臓形状矯正ネット」を開発する。本ネットは、コンピュータ編み機で、患者ごとの心臓の形に合わせて製造されるメッシュ状の袋である。手術で心臓周囲にこのネットを被せることで、心臓の拡張を防止し、患者の心不全症状の改善とともに、身体活動の向上を実現する。
顕微鏡を用いた細胞や血液などの検査は広く実施されているが、正確な検査には検査士の技量が必要であり、大量に検査するには手間と時間がかかる。そこで、高速デジタル顕微鏡とAI技術を組み合わせ効率的な検査が可能なシステムを開発する。さらに、多種多様な細胞の中からがん細胞をAIが精密に識別して取り分けることを可能とし、がん細胞の精密で高精度な検査の普及を目指す。
外傷などで末梢神経に欠損が生じた場合の現在の治療法は、患者自身の神経移植や人工神経を用いた外科手術である。しかし、現状では採取できる自身の神経の長さに限界があること、機能の回復が遅いなどの課題がある。
このため、ヒトiPS細胞から分化させた神経細胞を用いて軸索束組織を作製し、これらの周囲を生体内で分解・吸収されるチューブで囲み、末梢神経の欠損部分に移植することで、神経再生の足場とする新しい再生誘導法を開発する。
なお、この技術は軸索束を一度に大量に生産が可能であること、軸索束をチューブで囲むことで一製品となることに特徴がある。
これまで、外科医療は、内視鏡手術やロボット支援手術などの登場により、外科医の「目」や「手」を支援する技術が進化を遂げてきた。今後、更に外科医療の安全性を高めるためには、外科医の「認識」「判断」をサポートする技術開発が必要である。そこで、手術支援AIシステムを開発することで、手術中に外科医の目に映るものを自動解析して、リアルタイムに切るべき臓器や守るべき臓器などを分かりやすく表示し、外科医の「認識」「判断」を支援する。本システムを通じて、外科医の技術向上、手術時間の短縮、手術合併症(出血や臓器損傷など)を減少させ、更なる安全な外科医療の提供を目指す。
細菌感染症は正確な診断と適切な抗菌薬の投与が重要であるが、現在、安価で高精度に診断できる機器はなく、情報が少ない中で治療選択を行わざるを得ない。そこで、顕微鏡を利用して細菌の有無や菌量などを迅速に特定する検査(塗抹鏡検)と画像解析AI技術を組み合わせることで、細菌感染症の原因となる微生物の判定について、安価で素早く高精度の診断が可能となり、さらに抗菌薬の適正選択支援を行えるシステムを開発する。
現状の白血病治療により、ほとんどの症例で白血病細胞が消える寛解状態を迎えるが、白血病は再発のリスクが高く、再発後の生存率を高めるためには、その兆候を早期に発見することが重要である。本検査システムは、人の遺伝子を全て解析できる機器を使用し、骨髄生検により採取した骨髄液から患者ごとに異なる原因遺伝子変異を突き止め、それらを検出する検査薬を作成して血液検査等を行うものである。これにより、従来の検査における課題であった確定診断の度に求められる高侵襲な骨髄検査を行わず、多くの患者が低侵襲な血液検査等で再発モニタリング検査を実施することが可能になる。
現在は高齢化に伴い、医療費が大きくかかる慢性心不全患者の数が急激に増加しており、世界的に大きな問題になっています。
心不全に至る主要因は、急性心筋梗塞を起こした患者が、より重篤な心不全を発症してしまうことにあります。
私達は急性心筋梗塞患者に対して、自律神経の機能に着目し、人の治癒機能を最大限に引き出す医療機器システムを提供し、心不全の発症を未然に防ぎ、患者の健康寿命の延長を目指しています。
心血管疾患に対する運動療法、すなわち心臓リハビリテ―ション(以下、「心リハ」)は入院管理/外来管理共にガイドラインにて強く推奨されておりその有効性は広く認められているところである。心リハは何らかの心疾患により発生する心不全患者が対象で、対象となる既存患者は国内100万人海外1500万人、また国内年間30万人:海外300万人の新規対象患者が発生している。しかしながら心リハにおいて、適切な運動強度の目安としている嫌気性代謝閾値(AT値)は、測定装置が高額かつ操作が煩雑であり、普及を妨げる一因となっていた。
弊社は、エネルギー代謝物質である乳酸に着目し、乳酸の汗中含有量を連続的に計測可能な、独自の小型ウェアラブルデバイス(図)の技術を有している。本デバイスは、汗中乳酸量からAT値の代替指標となるLactate Threshold 値(LT値)を計測することが可能だが、乳酸計測の通例である血中乳酸計測でのLT値と高い相関を有する。本デバイスの製品化ならびLT値の解析による運動強度が管理可能なソフトウェアを具現化し、デバイスとソフトウェアを連動させた新たな心リハ用運動管理システムを提供する。
図 汗中乳酸計測ウェアラブルデバイス
乳がん治療では、QOL(Quality of Life)向上のため、乳房切除後に乳房再建を実施する割合が増加しています。集束超音波の加熱凝固作用を用いた治療は、特に病変の小さい極早期がんに対する低侵襲な治療法として期待されます。外科手術を伴わないため再建手術が不要になり、QOLの向上と同時に医療コストの低減も期待できます。また、厚労省の試算では、乳がん患者は40歳代から50歳代に多く、乳がんの罹患と治療によって、年間550億円の労働力損失が発生しているとする研究もあります。手術が低侵襲治療に置き換わることによって短期間での職場復帰が可能となり、術後の抗がん剤治療が必要となる患者数も低減すれば、労働力損失を小さくすることも想定できます。
今回、我々が開発した乳房用超音波画像診断装置に実装する技術として、低侵襲治療の対象病変か否かを判定するためのAI診断技術、および、低侵襲治療装置の開発を行います。
乳房用画像診断装置リングエコー(薬機未承認)
リングエコーに取り付けた集束超音波治療器による治療イメージ
一般人口の14-17%が罹患していると言われる慢性便秘。命に関わる疾患ではないため、軽く見られがちだが、生活の質(QOL)の低下や、労働生産性への悪影響は非常に大きいことが知られている。
現在の便秘の治療法は下剤の内服治療が基本であるが、特に難治性便秘患者にとって、その効果は十分とは言えず、実に75-90%もの患者が下剤内服治療に不満を持っているとされている。
薬剤以外の治療法として、腹腔鏡を用いた結腸摘出手術があるが、これは便秘の治療法としては体への侵襲が大きく、また便秘は根治できるものの、逆に水様便しか出なくなるなどQOLの改善も不十分であるため、普及していない。
したがって、特に難治性便秘の患者さんにとっては有効な治療の選択肢が存在せず、症状に苦しみながら下剤内服を続ける生活を強いられており、巨大な未解決医療ニーズとなっているのが現状である。
Alivasは便秘治療に単回完結型の低侵襲治療という第3の選択肢を提供すべく、世界初となる便秘の血管内治療用医療機器の開発に取り組んでいる。
われわれの有する多糖誘導体の特性を活かし、現在の粘膜下注入材の問題点(価格が高い、注入しづらい、使い勝手が悪い)を克服する、❶低価格、❷低粘性、❸多彩な製品ラインナップを備えた、生体吸収性高分子多糖体ハイドロゲル含有の粘膜下注入材を上市する。
本プロジェクトでは、以下について、技術開発面、法規制面、体制面、知財面で集中支援を受けて、目的の開発品の上市に繋げる。
①開発品の最適化のための条件設定
②非臨床POCの取得にむけた項目設定
③GLP安全性試験の試験項目、委託先選定
④治験デザインの相談
⑤臨床研究計画の策定
これらを進め、マイルストーン内に安全性試験を終了する。さらに、治験実施、薬事承認、製造承認を経て、開発品を販売する。
慢性腎不全によって人工透析を受ける患者は国内で約30万人に上り、医療経済的に大きな問題となっている。透析導入を回避或いは遅延させる技術の開発は、本邦のみならず世界的な大命題である。我々は特に腎臓癌に対して年間5000例以上実施される腎部分切除後の修復、および3万人以上が罹患しながら有効な治療法がない遺伝性難病の多発性嚢胞腎に着目し、新たな治療法を提供することによって透析患者を減少させるため、生体素材を利用した世界初の画期的な臓器修復用材料を開発した。本技術の特徴はブタ由来の臓器/組織に「脱細胞化」という独自の手法を用いることで、再生医療とは一線を画し、癌化や拒絶反応のリスクを有する細胞治療を用いることなく、コラーゲンを主体とした細胞外骨格だけで、腎臓の自己修復能を呼び起こし、なお且つ体内に自然に同化する医療素材を提供できる点である。更に本素材は、様々に形状をアレンジすることが可能で、内視鏡手術やロボット手術などの低侵襲治療とも相性が良い。本事業では、組織採取から生体由来骨格の作製と品質評価、臨床使用に至るまでの一連のニーズや要素技術を抑え、新しい生体医療素材の実用化に向けた一連の付加価値を確保することで、確実な事業化を図る。
都内に高度管理医療機器等の先端医療機器のエコシステムを構築することを目的に実施している東京都の事業で、本事業の運営事務局を日本コンベンションサービス株式会社が受託しています。
先端医療機器アクセラレーションプロジェクト事務局
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